パキスタン・シンド州、ダドゥ。日中は50度近い猛暑に包まれるこの地で、僕は一生忘れることのない「宴」に出会いました。
仕事のパートナーである現地NGOスタッフが、自宅に招いてくれたのです。
伝統的な刺繍が施された絨毯を地面いっぱいに敷き詰め、焼きたてのバーベキューを囲む。男性と女性が一緒にご飯をたべないというきまりがあり、その場にいるのは男性だけ。見上げれば、日中の灼熱が嘘のように和らぎ、ようやく息がつける夜空が広がっていました。
その夜の主役は、最近この世を去ったスタッフのお父さんが残した「詩」でした。80歳を超えて大往生したお父さんは、日々の出来事や思いを詩に綴るのが趣味だったといいます。今回、特別にその詩をミュージシャンたちが即興で歌い上げ、父に捧げる宴となりました。
僕は一度もお父さんにお会いしたことはありません。けれど、お父さんが残した家で、お父さんが残した子供や友人たちが、お父さんの言葉で踊り出す。その光景を見ているうちに、僕自身もまるでこの大家族の一員になれたような、不思議な温かさに包まれていました。
驚いたのは、観客が感謝や賞賛を込めて、ミュージシャンに紙幣をばら撒く独特の文化です。アップテンポな旋律に合わせて、宙に舞うお金。それに応えるように、親戚のおじさんたちもスタッフも次々に立ち上がり、激しく踊り出します。
最後はみんなで肩を組み、溢れんばかりの笑顔で写真を撮りました。「伝統文化を体験してくれてありがとう、また必ず来てくれよ」と、力強い握手とともに。
厳しい気候や日々の生活の苦労が確かにあるけれど、それ以上に故人を愛しみ、歌と踊りで分かち合う。ダドゥの夜空の下で、僕は『血の繋がりを越えて一つになる』という、深く、心地よい繋がりを教わった気がします。